嚥下障害、特に誤嚥は、多くの深刻な、場合によっては致命的な結果につながる可能性があります。 そのため、嚥下障害の症状を知り、予防や治療を行う必要があります。
ホーチミン市医科薬科大学病院のリハビリテーション部門の責任者であるグエン・ドゥク・タン医師は、「脳卒中やその他の病気後の患者の嚥下障害は非常に一般的であり、適切に治療されない場合、多くの深刻な、更には致命的な結果につながる可能性があります。 」と述べています。
嚥下障害とは?
通常、食べ物を飲み込むプロセスは、経口期(口腔期)、咽頭期、食道期の 3つの段階に分けられます。経口期では、口腔内の食物が唾液によって柔らかくなり、嚙み砕かれて咽頭に運ばれます。咽頭は口と食道の間の中間領域であり、実際の嚥下プロセスが始まる場所で、食べ物が口から食道にゆっくりと移動します。咽頭には、気道 (喉頭) が前方で交わり、食物通路 (食道) がすぐ後ろで交わる「接合部」があります。気道の上部には「声帯」と呼ばれる部分があり、食物がこの接合部を通って食道に到達する間、食物が落ちないように喉頭を閉じる役割を果たします。何らかの理由で食べ物や飲み物が通常通り食道を通らず、「誤って」喉頭に入り気道に落ちてしまう状態を「誤嚥」といい、嚥下障害の最も一般的な徴候です。さらに、嚥下障害は、さまざまな病気の結果である嚥下筋の衰弱によっても引き起こされます。これは、脳卒中によって引き起こされることが大半で、口から食道への食物と水の輸送プロセスを妨げます。
嚥下プロセス
嚥下障害の原因
嚥下障害を引き起こす病状は数多くあります。 ほとんどの場合、次の病気が原因です。
- 外傷性脳損傷。
- 脊髄損傷
- パーキンソン病
- 脳性麻痺
- 認知症
- 口、喉、食道の腫瘍または手術痕
嚥下障害の症状
嚥下障害、特に誤嚥は、多くの深刻な、さらには致命的な結果につながる可能性があります。 そのため、嚥下障害の症状を知り、予防や治療を行う必要があります。 嚥下障害の最も一般的で典型的な症状は次のとおりです。
- 飲食中または飲食直後に咳が出る。
- 食べたり飲んだりした後、何度も咳払いをする。
- 食べたり飲んだりすると声が変わる(声が「かすれる」)。
- 食べたり飲んだりした後、のどや胸骨の後ろがつっぱる感じになる。
- 食べ物を噛んだり飲み込んだりする時間が通常よりも大幅に長くなる。
- 食事中に食べ物や飲み物が口からこぼれる。
- 食べた後、食べ物が口腔内に残る。
- 食べたり飲んだりした後息切れがする。
嚥下障害の結果
嚥下障害は、次のような重大な結果につながる可能性があります。
- 食べることへの恐怖(特に他の人と食事をするとき)
- 栄養失調
- うつ病、自己隔離、社会的疎外
誤嚥は、肺炎、呼吸不全につながり、死に至る可能性があります。 特に高齢の患者さんでは、咳反射が弱いため、「無言誤嚥」、つまり自覚症状がなく、合併症が起こるまで発見が難しい場合があります。
嚥下障害の治療
嚥下障害の治療法はたくさんあります。 どの方法を選択するかは、嚥下障害の原因によって異なります。 一般的な方法は次のとおりです。
- 食べ物や飲み物の種類の変更
- 安全に食べるための体位の変更
- 嚥下筋の強力な運動、嚥下筋への電気刺激
- 栄養を与えるため、経鼻胃管の挿入、又は胃バイパス手術 (病気が重度で他に何もできない場合に適用されます。)
- 「とろみ剤」の使用
嚥下障害の治療における「とろも剤」の役割
普通の人は、食事中や会話中、気をつけないとむせることがあります。最もシンプルな例は、唾液でむせることです。水を飲むときにむせるのは一般的であり、特に高齢者では、飲み込む筋肉が弱くなり、飲み込む際の反射も若い人よりも悪くなります。むせる可能性は、食べ物の濃さや液体の種類によっても異なります。一般的に、食物内の液体が多いほど、むせる可能性が高くなります。つまり、食道ではなく気道に入りやすくなります。
逆に、固すぎたり、乾燥しすぎたりすると、むせる原因となる可能性があります。ヨーグルト、アイスクリーム、プリンなどの適度な硬さの食品は、飲み込んだ後に下に降りてくるのが容易であり、気道に留まり続けるのを避けるのに十分な循環時間の両方において理想的です。しかし、実際には、そのように数種類の食品しか食べない人はいません。したがって、問題は、嚥下障害の患者が、どのようにしてむせることを恐れずに自分の意思で食物を食べたり飲んだりできるかということです。それが臨床で「とろみ剤」が使われる理由でもあります。

Powder thickener (photo source: Internet)
「とろみ剤」(英語:thickeners)は、粉末またはゲル状の特別な物質であり、食品と飲料を混合するために使用され、食品の密度または粘度を高め、それによって食物が誤って気道にいくのではなく、食道に容易に移動するのを助け、患者の誤嚥を防ぎます。とろみ剤は一般に味も色もないため、食品の均一性を高めることを除いて、食品の特性を変えることはありません。先進国では、とろみ剤は長い間臨床治療に使用されてきました。「とろみ剤」の使用は、一般的な嚥下障害、特に誤嚥の治療において、シンプルですが効果的で安全な解決策であることを示す多くの研究が世界中にあります。

とろみ剤は、嚥下障害のある患者が、むせることを恐れることなく、要望に応じてほぼすべての食品を食べるのに役立ちます(写真提供:インターネット)
現在、ベトナムでは脳卒中をはじめとする様々な疾患による嚥下障害が非常に多くなっています。しかし、多くの患者が嚥下障害の治療に十分な注意を払っていないことは残念あり、治療プロセスは主に麻痺した四肢の筋肉の強化、動きの学習、歩行、生活などに焦点を当てています。したがって、 臨床現場では、患者が肺炎、呼吸不全、栄養失調などの合併症を持っている場合にのみ嚥下障害が検出されるケースが多くあります。そして、これらに対処するプロセスがタイムリーでなく、効果がなかった場合、最終的に患者が非常に不幸な死に至ることがあります。
この状況を説明するには多くの理由があります。1 つ目は、嚥下障害に対するコミュニティの理解がまだ限られていることです。2つ目は、こちら重要な理由ですが、嚥下障害の管理に関する広範な訓練を受けた医療スタッフ (言語聴覚士) が多くないことです。3 つ目は、患者が僻地に住んでおり、嚥下障害を治療できる医療施設にアクセスできないことです。そのほかの理由としては、「とろみ剤」などの嚥下障害の治療補助剤が医薬品と同じように公式に供給されていないため、広く、すぐに利用できないことです。
近い将来、上記の問題が解決され、病気との闘いに使用できるより効果的な「武器」が手に入るようになり、それによって嚥下障害患者の質の高い治療とより良い生活がもたらされるようになることを願っています。
Source: https://suckhoedoisong.vn/